穴明け加工中の折損をいう。折損の形態には、曲げ折損、ねじれ折損等があり、曲げ折損はドリルの横方向への負荷によるもので溝の根元付近での折損が多く、ねじれ折損はトルク大によるもので溝の中間等根元以外の部分での折損が多い。
曲げ折損
ねじれ折損
故障原因 | 故障の状態 | 対策 |
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ドリル剛性が低い | 曲がりが大きく、溝の根元側で折損する | ウェブ厚、ウェブテーパを変更し、剛性を高める 穴位置重視型ドリルの使用 |
チップポケットが小さい | ねじりモーメントの増加により、溝長の中間付近で折損する | ウェブ厚、ウェブテーパ、溝幅比を変更し、チップポケットを増やす |
溝長、ボディー長が長い | 溝長、ボディー長が必要以上に長いと、曲がりが大きく穴位置精度悪化 | 適正な溝長、ボディー長の設定 |
超硬材料の不適正 | 抗折力が低く、切削抵抗により折損する | 耐折損性に優れた超硬材料の適用 |
故障原因 | 故障の状態 | 対策 |
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ドリルのアンバランス(チゼル偏心、リップハイト差、カケ) | 穴位置精度が大きく悪化し、折損に至る | 先端形状のチェック |
再研磨品で先端外周摩耗が進んでいる | フロントテーパとなり切削抵抗が増大し、折損する | 外周摩耗の大きいところを再研磨により取り除く ヒット数、基板、ドリル径により異なるが取り量の目安は0.05~0.10mm程度 |
故障原因 | 故障の状態 | 対策 |
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チップロードが大きい | 切り屑排出の悪化や切れ刃欠損などにより穴位置精度が悪化し、折損に至る スラスト荷重は増大する |
適正なチップロードの選定(加工条件表参照) |
チップロードが小さい | 摩耗が進み、穴位置精度が悪化し、折損に至る | |
回転数が低い | 切削抵抗(ねじりモーメント)増大により工具負荷が増し、折損する | 適正な回転数の選定(加工条件表参照) |
回転数が高い | 摩擦熱の増大により焼き付き発生し、折損に至る | |
ドリル先端の付着物(Cuなど基板構成材料凝着、基板から抜ける際に切り屑付着) | 当て板への食い付き時から曲がり、折損に至る | 加工条件の最適化 チゼルラインの短い(ウェブ厚小)ドリルの適用 チップポケットの大きいドリルの適用 |
ステップ条件の不適正 | ステップ量が基板設定にマッチせず、切り屑の排出性が悪く、折損発生 | ステップ条件の見直し |
捨て板への切込み深さ過多 | 切り屑の量が多く、排出性悪化し折損を引き起こす | 適正な切込み量の設定 |
故障原因 | 故障の状態 | 対策 |
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重ね枚数が多い | 切り屑排出が悪く、精度が悪化し折損する ねじりモーメントが増大する |
適正な重ね枚数(要求品質を満たす重ね枚数)を選定する |
銅箔層数が多い、または内層銅箔が厚い | 工具への負荷(主にねじりモーメント)が増大し、摩耗促進により折損する | 重ね枚数、ヒット数を減らし工具への負荷を軽減する ステップ加工やダブルドリリングを適用する |
難削材(ガラスクロス、樹脂)の基板 | 工具への負荷が増大し、摩耗、欠損促進および穴位置ズレにより折損する | 重ね枚数、ヒット数を減らし工具への負荷を軽減する |
エントリーボード(当て板)の不適正 | 板厚が大きい場合、切削抵抗が増加し折損する | 適正な厚さの選定 |
当て板進入側のキズ、付着物 | 当て板上の凹凸の影響を受け、曲がりが発生し折損する | 当て板管理の注意 ブッシュのキズ等チェック |
バックアップボード(捨て板)の不適正 | 硬度が高く摩耗が進み、また切削抵抗も増加し折損する | 適正硬度の選定 |
基板セット状態の不具合 | バタつき等基板の固定不足で、曲がりが大きく折損に至る | スタックピンおよびテーピングの確認 当て板の浮きやズレが無いようにする |
基板(ガラスクロス、銅箔)の凹凸、うねり、キズ | 基板上面のうねり、キズにより食い付き時から曲がりが発生し折損に至る | 基板品質のチェック |
基板品質の不具合 | レジン、クロスの不均一により、穴位置ズレを引き起こし折損する | 基板品質のチェック (例)穴位置測定機の精度確認画像で基板の不均一状態を確認→極端な縞模様など |
故障原因 | 故障の状態 | 対策 |
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スピンドルの振れ | 動的振れにより、穴位置精度が悪化し、折損する | スピンドルの振れ抑制(メンテナンス・修理) 目安:10µm以下、サイズø0.3以下は5µm以下が望ましい |
ドリルチャック時の振れ(チャック内部での異物噛み込み、チャック内部の摩耗、キズ、識別用マジックインキ等) | ドリルが正常に把持されず、振れ増大により折損する | コレットチャックのメンテナンス |
ブッシュ当たりの不均一 | ブッシュの面当たり状態が不均一、折損ドリルの圧着および異物付着による当たり不良による折損 | プレッシャフットとテーブル面の平行度チェック PVチェッカーでのブッシュ当たりチェック (ブッシュ面に対して80%以上の当たりを確保) |