birth story
製品誕生秘話
これまでに作られた数々の製品には、設計者・現場・顧客との対話が息づいています。
ときには「不可能」と言われた精度や耐久性を、自社で設備ごとつくり上げて実現してきました。
製品が誕生した背景には、ユニオンツールらしい「粘り強いものづくりの姿勢」があります。
ULFコーティング
基板加工の可能性を広げた技術革新。
その精神はこれからのイノベーションへ
小径ドリルの限界に挑む
2000年代、モバイル機器の普及と薄型化・高密度化の流れから、パッケージ基板の需要が急増しました。
それに伴い、基板を穴加工するドリルにも直径0.1mm前後という小径でありながら、複数枚の基板を重ねても折れることなく、高精度な穴加工の実現が求められました。
それに応えるべく、ドリル形状改良や超硬材料開発に取り組んでいましたが、性能改善には限界が見え始めていました。そんな折、直径0.1mmのドリルにDLC(Diamond Like Carbon)コートを施したところ、驚くほど折れにくくなることがわかりました。
基板の重ね枚数を2倍にしても折れず、ノンコートドリルとの差は歴然でした。
偶然の発見と諦めない探究心
しかしながら、DLCにはドリル先端の摩耗抑制効果はありませんでした。
にもかかわらず折れにくくなる理由が最初は不明でした。この解明を目指し、高速度カメラによる観察や、切削動力解析をした結果、DLCがドリル溝表面の摩擦抵抗を低減させ、切り屑の流れをスムーズにすることでドリルへの負荷を軽減していたことがわかりました。これにより、折れにくくなるメカニズムが解明されたのです。
ULFコーティングの誕生と未来への歩み
これが開発のスタートとなったDLCは、「Uniontool Lubricant Film(潤滑膜)」の頭文字から「ULF(ウルフ)」と命名され、商品化されました。もしあのとき別の型番のドリルで試されていたなら、ULFはなかったかもしれません。しかし、その背後にはお客様のニーズに応え、真摯に課題解決に挑む姿勢がありました。
ULFは当社の知識と経験が結実した成果であり、その精神を胸にこれからもイノベーションを追求し、ものづくりの現場を支えていきます。
UDCシリーズ
2011年、弊社が展示会で初めて発表した「超硬加工用UDCシリーズ」。その誕生までには、多くの試行錯誤と想いが込められています。
「不可能」から始まった挑戦
当時、超硬合金の加工は放電や研磨が主流で、切削加工は「不可能」に近いとされていました。しかし、「もしダイヤモンドコーティングを施した超硬エンドミルで超硬合金を加工できたら面白いのでは?」という小さなアイデアが、すべての始まりでした。その可能性を追求するべく挑戦がスタートしたのです。
UDCシリーズに使用されるダイヤモンド皮膜は、熱CVD法で成膜され、高硬度・高密着性・耐摩耗性に優れています。さらに、開発チームは皮膜の微細組織を制御し、硬度と靭性を飛躍的に向上させた特殊ダイヤモンド膜を新たに開発。
この改良によって、従来の限界を超える性能を持つ製品が誕生しました。
“削れない”を超える
この経験を通して「未知の挑戦が新しい時代を切り開く」という信念を得、UDCシリーズはより革新的な製品へ進化を遂げていきます。誕生から10年以上が経った今では、超硬加工の「当たり前」として多くの現場で活躍するとともに、さらなる長寿命化、高精度化、高品質化への期待も寄せられています。それでも、そこに満足することなく、私たちの挑戦は今日も続いています。
挑戦で未来を切り拓いていく
UDCシリーズは、技術者の情熱と「やってみよう」の一歩で、常識を覆し、新たな可能性を切り拓いた結晶です。そしてその歩みは、これからも止まることはありません。
AD(自動ドリル研削盤)
1980年代、ユニオンツールが挑んだ新たな道 - AD(自動ドリル研削盤)の誕生と進化を紹介します。
生産体制の限界と新たな挑戦の始まり
1970年代当時、ユニオンツールの主力設備であったPCBドリル加工機では、1本のドリルを製作するのに3台の設備を使用し、完成まで約3分を要していました。この生産体制では1日の生産量が200本程度に限られ、お客様の旺盛な需要に対応するには不十分でした。
さらに、複雑な生産工程と手動対応の必要性が、効率的な大量生産を阻む要因となっていました。このような背景のもと、従来技術の限界を超える新たな設備の開発が急務となり、ADシリーズの挑戦が始まりました。
ADシリーズの進化。そして量産技術の象徴へ
ADシリーズは「効率化」「自動化」「高精度」をキーワードに進化を遂げます。初号機AD-1で設備の複合化に成功し、飛躍的に生産性が向上。次段階のAD-2ではホッパー構造を採用し、効率的な材料供給を実現。
AD-3以降では太径ドリルにも対応可能となり、特にAD-5でNC化が進むことで自動化と高精度加工を両立しました。このようにADシリーズは需要の変化に応じ改良が進み、現在では日産5,000本以上を誇るユニオンツールの量産技術の象徴としての設備となっています。
片山一郎氏の理念と挑戦が生みだした革新
このADシリーズの進化を支え、牽引したのが、創業者の片山一郎氏でした。片山氏は、生産現場の課題に正面から向き合い、「競合他社を真似るのではなく、独自技術を追求する」という信念を貫きました。設計から試作、検証まで一貫して担当者が担う設計体制は、効率化と技術の蓄積という結果に結びつきました。また、片山氏の即興的かつ創造的なアイデアは、開発チーム全体に革新の意識を根付かせ、強力な推進力となりました。
ADはユニオンツールの技術革新の象徴であり、この成功は長岡工場の生産拡大や小径ドリル市場での当社のプレゼンス向上に大きく寄与しました。コンパクト設計や生産効率へのこだわりといった文化は、現代の設備開発にも受け継がれています。ADの誕生と進化は、ユニオンツールが成長を続けるための原動力となったのです。